冷媒回収を少しでも早くしたい!トランスを上手に使う

エアコンの圧縮機の交換などの「冷媒回路」の作業には、フロンガスを回収しなきゃいけません。

マルチエアコンなんかのフロン封入量の多いエアコンの「冷媒回収」にはかなりの時間がかかります。

作業時間のほとんどが「冷媒回収」にとられます。

今回は「冷媒回収」の時間を少しでも短縮する方法を紹介します。

冷媒回収とは

エアコン配管・装置内の「フロンガス」は「フロン排出抑制法」という法律大気放出は禁止されています。

その為、冷媒回路の修理には配管・装置のフロンガスを回収してやらないといけません。

「フロン回収機」という機械で「回収ボンベ」に回収します。

「フロン回収機」は「ガス(気体)のフロンガス」を圧縮して「液体のフロンガス」にして「回収ボンベ」等に排出します。

これがポイントです!

回収機の圧縮機のバルブはプラスティックなので「液体」を圧縮すると簡単に壊れます。

なので「吸入圧」を0.4Mpa前後まで絞って回収します。

当然「油」が回収機に入ると液圧縮で壊れちゃうので、回収機直前に「オイルセパレーター」があると回収機を保護できます。

エアコン室外機も同じ構造で、圧縮機の手前にオイルセパレーター(アキュームレーター)があります。 

回収時間の短縮

回収スピードを上げようと、吸入圧を0.5Mpa以上にしても無駄です!

確実に回収機が壊れるだけです。

吸入圧が0.4Mpa前後の回収が「フロン回収機」の最速回収スピードです。

R410Aなどの「新冷媒」は環境によっては最大量の回収を維持することはできません。

回収ボンベの「可溶栓」は60℃で溶けます!

回収機から出た「液体のフロンガス」を受け取る「回収ボンベ」には必ず安全装置が付いています。

フロンガスを液体で満タンにしてしまうと、温度変化で簡単にボンベが破壊・爆発してしまうので、フロートスイッチや可溶栓といった「安全装置」が取り付けられています。

この可溶栓は60℃で溶けます。

冷媒回収中に可溶線が溶けると、ボンベ内のフロンガスが全て放出されます。

その為、「回収ボンベ」は40℃以下に保つように法律で定められています。

R410Aで40℃といえば約2.3Mpaぐらいです。

回収機も大体2.4Mpaぐらいで「高圧異常」で停止します。

実は回収機で新冷媒をガンガン回収すると、楽勝で2.3Mpa以上になります。

回収ボンベも触れないぐらい熱くなります。

回収序盤は必ず「回収機の吐出圧(高圧)」に注意です!

回収ボンベの20Kgボンベです。

一般によく使われると思います。

空の状態で約16Kgあります。フロンを18Kg回収すると、34Kgになります。腰がやられますね。

可溶線は60℃で溶けます。

フロンガスに空気が混ざっていたり、回収機のバルブが「パージ」のまま回収しちゃうと60℃を超えて溶けます。

温度(圧力)を上げないように回収するには吸入バルブを絞って「吸入圧」を下げればいいのですが、ガンガン回収したいので「回収ボンベ」自体を冷やします。

回収ボンベに入る前にコイルを水に浸けたり、フィンで冷やす製品もありますが、単純に「濡らしたウエスでボンベを巻く」だけで十分です。

保険で可溶栓も冷やします。 

冷媒が寝込む!

回収機の吸入バルブを調整して、吸入圧が0.4Mpaをキープしているうちは最速でガンガン回収できます。

そして、吸入バルブを全開にしても圧力は下がっていき、0.2Mpa以下になるとアキュームレーターが真っ白く凍っていきます。

ここからが本当の戦いです!

フロンガスは装置内の「冷凍機油」に溶け込みます。

この溶け込んだ「フロンガス」はゆっくりと蒸発していきます。

完全にフロン回収した装置内の「油」をポリタンク等に入れても、しばらくは溶け込んだフロンガスが出てくるのでポリタンクはパンパンに膨れます。

破裂するので完全に密封できません。

アキュームレーターに凍ってる線がくっきり出るので残りの量が分かります。

こいつを回収するのにほとんどの時間を使います。

もちろん、そのまま回収し続けても回収できますがかなりの時間がかかります。

寝込んだ冷媒を温めろ!

寝込んだ冷媒はどこにいるのか?は非常に簡単です。

凍っている箇所にいます。

そこを温めてやるとOKです。

回収機を止める

フロン回収機の運転を止めるだけでも、寝込んだフロンガスの温度を上げることができます。

0.2MpaのR410Aの飽和温度は、-30℃近くにもなります。

その状態で強制的に回収しても、温度はどんどん下がるだけです。悪循環です。

休憩やご飯を挟むなら、思い切って回収機を止めてしまいましょう!

帰ってきた頃には温度も上がり、圧力も上がっています。氷も溶けます。

氷の溶けた状態の圧力が0.3Mpa以上なら、おそらく再び凍り始めます。

0.1Mpa以下ならそのまま回収が終わる可能性が高いです。

ドライヤー

ドライヤーで温めるのも手です。

しかしドライヤーの「温風」は強力ですが、消費電力も大きくなります。

「フロン回収機」の消費電力もバカにできません。

同じ回路で、二つ同時に使うとブレーカーが落ちます。

なのでまずは「フロン回収機」の運転を止めた状態で、ドライヤーの「温風」で温めます。

氷が溶けて、ぬくもった場所から乾いていきます。

十分ぬくもったら、ドラーヤーを「送風」にして回収機を運転します。

「送風」でもフロンの飽和温度に比べたら20〜30℃温度差があります。

風を当て続けるだけでも効果は大きくなります。

別回路で「温風」が出せても、長時間の使用は注意です。

ヘアドライヤーは長時間の使用を想定していないので、熱線が焼き切れます。

適度に「送風」に切り替えて使いましょう。

水をかける

今のところ「水をかける」が最強です!

室外機の近くに蛇口とホースがあれば最強です!

蛇口を絞って少しずつ水を流した状態で回収すれば相当の時短になります。

たとえ水温が10℃でスイカは冷えても、フロンの飽和温度と比べれば熱湯です。

作業車にホースは必須です。

ホースや蛇口が近くにない場合は、凍った部分にバケツで水をかけるだけで十分です。

少しずつ少しずつでOKです。 

伸びるホースは、軽くてかさばらないので超便利です!

ダウントランスを使う

ちょっと大きいホームセンターにある「ダウントランス」は非常に便利です!

 

200Vの交流を、100Vに落としてコンセントが使えるようになります。

室内機の近くにコンセントがない場合も少なくありません。

延長コードを長くしすぎると、電圧降下で「フロン回収機」が運転しないこともあります。

そんな時は「ダウントランス」を使います。

室外機には必ず「電源」があります。

三相の「動力」でも二つからは「単相200」が取れます。

基盤も替えるんで端子台を外しましたが、電気部品を触らないならトランスを割り込むだけで「コンセント」が使えます。

2台一緒に回収機を使いたい時も重宝します。

空いてるブレーカーからも電源が取れます。

この「ダウントランス」のコンセントには「115V」のコンセントもあります。

回収機はここに繋ぎます。

能力が15%アップです!!!

(回収機によります)

回収機を2台運転できるし、回収機を運転しながらドライヤーの「温風」も出せます!

115VはDCアダプタはOKですが、ドライヤーを長時間使用すると確実に熱線が焼き切れます。

「トランス」の耐久電流も注意です!

小さすぎるとトランスは燃えます。

写真の30Aなら回収機2台運転も大丈夫でした。

まとめ

大量のフロンガスを回収するには、時間がかかります。

特にアキュームレーター等が凍りだしたら本当に時間がかかります。

「回収機を止める」「ドライヤー」「水をかける」を上手に使うと回収時間は短縮できます。

これらをうまく組み合わせましょう!

メーカー・機械で「冷媒のねこみ」の有無もあります。

ポイントは「凍った箇所を温めろ!」です。

冷媒は冷たい部分に集まります。

冷媒の習性をうまく利用して「回収時間」の短縮をしましょう!

ありがとうございました。