現代のエアコンには電磁弁とリニア膨張弁が使用されています。
電磁弁・リニア膨張弁とはどんなものなのか?
それぞれの注意点を紹介します。
電磁弁(Solenoid Valve)SV
電磁弁とは電磁石の力で開閉する「弁」の事です。
配線の繋がっている「電磁弁コイル(ソレノイド)」と配管と繋がっている「弁本体」の2種類で構成されています。
通常 弁本体に電磁弁コイルがビスで固定されていて、
電磁弁コイルに電流が流れると「電磁石」の力で、弁本体の内部の「弁」が引っ張られて回路が開きます。
コイルに電流OFF → 弁 閉
コイルに電流 ON → 弁 開
冷房・暖房を切り替える「四方弁」も電磁弁で切り替えます。
電磁弁は 全開 か 全閉 のどちらかしかできません。
コイルを外した時の注意点
電磁弁コイルに電流が流れている時に、弁本体から外したり着けたりすると、
「カチャン」と弁が開閉する音と手応えがあります。
しかし、そのまま電磁弁コイルに電流が流れている状態で外したままにするのはNGです!
コイルの中は、非常に細い銅線が巻いてあります。
なので、弁本体に取り付けていない(負荷が無い)状態では、電流が流れすぎて銅線が焼き切れてしまいます。
なので、電流が流れているコイルを外した時は、中に鉄(ドライバーなど)を差し込んでおきます。
ただし、これは短時間の処置で、長時間コイルを外す場合はコネクター等を抜いて電流が流れないようにしてください。
サイズが違う、きちんと刺さっていないコイルはそのうち焼き切れます。
強制的に弁を開けるには?
コイルが故障した時や、ブレーカーOFFの時に
弁を強制的に開けるには「電磁弁オープナー」を使用して開けます。
オープナーを弁本体に被せると「カチャン」を弁が開きます。
この時に「カチャン」と作動しない場合は弁本体が固着していて不良です。
弁本体の診断や冷媒回収時に「電磁弁オープナー」は必須アイテムです。
オープナーとかっこいい名前ですが、ただの永久磁石です。
位置さえ合えばこんな磁石でも弁を開けることができます。
自己保持ソレノイド
ルームエアコンの四方弁に使用されていた電磁弁コイル(ソレノイド)が非常にユニークだったので紹介します。
「自己保持ソレノイド」といって、電磁弁コイルに永久磁石が組み合わされています。
コイルに電流OFF → 永久磁石の力で 弁 開
コイルに電流 ON → 電磁弁が永久磁石の磁力を打ち消して 弁 閉
になります。
通常の四方弁の動きは
コイルに電流 ON → 冷房
コイルに電流OFF → 暖房 です。
通常の電磁弁コイルなら、コイルが故障すると強制的に弁を開かないと暖房にできません。
しかし自己保持ソレノイドなら、コイルが故障しても
外せば冷房
付ければ暖房 が使用できます。
リニア膨張弁 (Linear Expansion Valve) LEV
リニア膨張弁とは、電磁弁と同じく電磁石の力で弁を開閉できますが、こちらは開度を細かく調整できます。
リニア膨張弁も「膨張弁コイル」と「膨張弁本体」の2つが組み合わされています。
膨張弁本体の弁は「ニードルバルブ」で中の針が上下して開度を調整します。
分解してみました。
中は永久磁石と、カバーには磁石のツノが当たる部分にバネが入っています。
中の永久磁石が回転するとニードルが上下します。
膨張弁とは?
凝縮器から40℃前後の高温・高圧の液体のフロンガスが出てきます。
そのまま、蒸発器に送っても高温・高圧のために蒸発できません。
その高温・高圧の液体の通る配管を狭くしてやると、その先で圧力が下がり、温度も下がります。
蒸発器の最適な温度、圧力に流量を調整してあげるのが膨張弁のお仕事です。
流れを堰き止めて、必要な流量だけを流します。
ただ単にその仕事をするだけなら「キャピラリーチューブ」で十分ですが、インバーター制御になり細かく流量を調整するために、リニア膨張弁が多く使用されています。
差込式とねじ式
室外機には差込式の膨張弁が多く見られます。
最初に紹介したヤツや、こんなヤツです。
古くなると、コイルと本体が固着します。
無理に外すと配管が折れるので、潤滑油などを使って外しましょう。
複数台個別に運転できるマルチエアコンには、各室内機ごとに膨張弁がついています。
この膨張弁で個別に冷媒を流したり、シャットアウトします。
室内機の膨張弁には「ねじ式」が使用されます。
リニア膨張弁を強制的に開けるには?
差込式のリニア膨張弁なら専用のオープナーがあります。
装着して回転すれば、開けることも閉めることもできます。
ねじ式はコイルを外せば全開になります。
ねじ式のコイルを外した状態で放置すると、そのうちシール部分からガスが漏れます。
膨張弁コイルの交換
マルチエアコンで、一台だけ冷房や暖房が効かない!
そんな時は「膨張弁コイル」を交換します。
「膨張弁コイル」はフレアナットのようなナットで固定してあります。
そのままナットを緩めると配管が折れるので、必ず2丁掛けで回します。
ナットはネジロックなどで固着しているので、邪魔な配線を根本で切って本体ごと回します。
この室内機は恐ろしく作業がしやすかったのですが、とんでも無く狭い隙間でナットを緩めないといけない室内機が多いです。
そんな時のためにメガネレンチを切ってジグを作っています。
リニア膨張弁用の「パルス発生器」やメーカーの「サービスツール」があると個別に膨張弁の開度を開け閉めできます。
その場合は、
コネクターを差す前に「開度全開(2000)」をパルス発生器やパソコンから送る。
コネクターを差して「開度全閉(40)」をパルス発生器やパソコンから送ると「0点調整」ができます
「パルス発生器」やメーカーの「サービスツール」が無い時は、室外機を電源リセットします。
温度式膨張弁(アナログ式)
冷凍機やチラー等では「温度式膨張弁」が使用されています。
温度式膨張弁は「感温筒」を配管に固定して、アナログ式に温度で開度を調整します。
感温筒と本体の円盤状の「エレメント部」はキャピラリーチューブで繋がっていて内部にはガスが封入されています。
大まかな流量は設定温度にあった「オリフィス」で調整し、細かい調整は本体の袋ナットの中の「調整スピンドル」で調整できます。
まとめ
膨張弁が「閉」で故障した場合、運転圧力が下がるのでルームエアコンなど多くのエアコンで「ガス漏れ」と誤判断されがちです。
運転停止の圧力も参考に判断しましょう!
「電磁弁」「リニア膨張弁」共に故障時には「コイル不良」が多いですが、配管内の「水分」「異物」によっては弁本体の固着や引っ掛かりも発生します。
そのため工事の際には「配管に異物を入れない」最新の注意と、しっかり「真空ポンプ」で真空引きする必要があります。
「オープナー」を持っていると「コイル」が悪いのか「弁本体」が悪いのかの診断もできます。
大きい室外機にはこれだけ電磁弁(SV)・リニア膨張弁(LEV)があります。
マルチエアコンの室内機の「膨張弁コイル」の交換はそれなりにあります。
メーカーの「サービスツール」があればパソコンを繋いでどれが悪いかがすぐに判ります。
膨張弁が閉まりっぱなしの場合は、その室内機が効かないだけですが、
開っぱなしの時は、違う室内機が効かなくなることがあります。
その室内機に冷媒が流れて、違う室内機に冷媒が流れにくくなるからです。
電磁弁・膨張弁は相当奥が深いです。
ありがとうございました。
足毛ボーボーでフローリングで滑ります。